いまだに世間一般がもつSMのイメージはハードSMであることがほとんどです。肌が赤くなってしまうほどの苛烈なムチやロウソク責め、三角木馬に跨がらせて皮膚に針を通すプレイ。これらは言うまでもなくハードなSMプレイです。
しかし、現実的にSMプレイを楽しんでいる人口のうち、ここまでのハードプレイを日常的に楽しんでいる人はおそらく1%もいないことでしょう。理由としては、ハードなSMプレイを行うためには特別な道具や舞台が必要になったり、本当のハードSMに耐え切れる・またそれを望むMもごくごく僅かなため、非常にハードルの高いプレイとなっているのが実情です。
仮にハードなプレイを望むMがいたとして、そのための道具や舞台が整っていたとしても、極限にまでMを責めたてるプレイですから危険が伴います。事故や怪我はもちろんのこと、深刻なケースによっては死亡例すらあるのですから、その責任を負える覚悟のあるSもまた少ないのです。
では、なぜそんな危険で需要の少ないハードSMプレイが生まれることになったのかといえば、1つの到達点に達するとさらなる高みを求めてしまう人間の探究心や欲望があるためです。
いまハードSMを楽しんでいる人のほとんどは、まずは私達と同じようにソフトSMから始めてみた人が多いことと思われます。ソフトSMをすっ飛ばしていきなりハードから入る人も稀にいますが、そういった人はかなり特殊なケースですからね。
まずは目隠しプレイ……そしてゆるい拘束プレイ……。そんなソフトSMプレイを色々と楽しんでいくうちに、もっと刺激のあることがしたい欲望が芽生えてくるのは自然なことです。
そういった人たちの望みに応えるのがハードSMプレイなわけですが、必ずしもその地点に到達することが幸せであり目指すべきもの、というわけではないのです。ハードSM愛好家はソフトSM愛好家よりもレベルが高く優れている存在ではありません。あくまでも個人の趣味趣向やそのペアにあったプレイを行って楽しむのがベストです。
ちょっと1回だけやってみようかな、といった気軽に始められるプレイは少ないですので、ここではメジャーなハードSMプレイの種類とそのやり方について解説したいと思います。
その1.ピアスや針を使ったプレイ
一般的にピアスといえば耳につけるもので、女性のファッションとしてはもちろんのこと、男性でもピアスの穴を開けている人は珍しくありません。
SMプレイとしてピアスを利用する際は、主に性感帯にピアスの穴を開けることが多いです。ポピュラーなものとしては「乳首ピアス」と「ラビアピアス」があります。
乳首ピアスはその名の通り乳首にあけるものですが、ラビアピアスは初めて聞く方も多いかもしれませんね。ラビアピアスというのは、女性器にピアスをつけることをいいます。クリトリスであったり、小陰唇や大陰唇に取り付けるタイプのピアスです。
乳首ピアス
一般的には両方の乳首にピアス穴を開けることが多いです。その穴に輪っか状のピアスをとりつけ、そこに何かをぶら下げてみたり、両乳首を鎖で繋いでみたり、取り付けた鎖をひっぱってみたりと、プレイにおいても実用的であるのが特徴です。
また、それだけではなく乳首にピアスを取り付けることによって「奴隷の証」のような精神的な被支配感を味わうことも出来ます。
もうひとつのメリットとしては、性感帯としての感度が増すこともあります。これは個人差がありますので必ずしもそうなるとは限らないのですが、どちらかといえば前よりも感じるようになったと答える人のほうが多いようです。
ピアスという装飾品の特徴として、徐々に太いモノに変えていくとピアス穴が肥大化していく性質があります。それは乳首も同様で、ピアスを太くしていくことで乳首も肥大化していき、それによって感度が増すといった効果もあります。
乳首ピアスは古来から行われている伝統的な行為であり、いま現在においてもアメリカのインディアン部族カランカワの男性や、アルジェリアのカビル族の女性は乳首にピアスを開けているそうです。
また、西洋文化においても中世時代に乳首ピアスが王室や貴族の間で流行し、フランス王シャルル6世の妃イザボー・ド・バヴィエールも乳首ピアスをしていたといった説もありますし、小さなダイヤモンドをつけたピアスや金の鎖を使って贅を尽くしていた記録もあります。
ラビアピアス
大きく分けてクリトリスにピアスを取り付ける「クリトリスフード・ピアッシング」と小陰唇(いわゆるビラビラ)に取り付ける「インナー・ラビア・ピアッシング」や大陰唇に取り付ける「アウター・ラビア・ピアッシング」の3パターンがあります。
クリトリスに取り付ける場合は快楽の増幅を目的としている場合が多いですね。金属で硬いピアスがクリトリスという性感帯に触れることで、単純にクリトリスへの刺激を増すことになります。
大陰唇や小陰唇に取り付ける場合、それ自体が快楽を増すようなことはありませんが、こちらは精神的に「あなたの所有物です」といった気持ちをより強くさせることがあります。
膣穴の左右にピアスを取り付け、その輪っかを南京錠で繋いで鍵をかけることにより、貞操帯の代わりとして利用することもできます。精神的にだけではなく、物理的にもご主人様の所有物であることを実感できるというワケですね。
ピアスを開ける際はなるべくお店で
ピアスは身体に穴を開ける行為ですから、そこからバイキンがはいって化膿したりする可能性があるなど、間違った方法で開けてしまうことは大きなリスクを伴います。
乳首くらいでしたら市販の耳用ピアッサーを使うのもいいかもしれません。その行為自体がまたSM行為の一つとして成り立ちますし、ご主人様にあけてもらった穴であれば同じ穴でも重みが違いますからね。
ですが、少しでも不安があるのならきちんと衛生面や専門器具を保証してくれる病院やピアススタジオなどでお願いするのが最も確実です。
機械や電気を使ったプレイ
欧米のハードシーンでは割とメジャーなプレイなのですが、日本においてはかなり少ないプレイです。
機械といってもいわゆる電マのようなものではなく、まるで工事に使うようなゴツい振動とピストン運動を行う、文字通りハードな機械を用いるものです。
おそらく欧米には一家に一台、芝刈り機や車の整備用にそういった機械が備えられていることが多いといった背景があるからかもしれません。日本ではなかなかそういった大型の機械を常備している家庭は少ないですからね。
こういった機械は人間相手に使うことをまったく想定していないパワーですので、気をつけないと簡単に相手のカラダを傷つけてしまいます。出力設定が出来るのならまずは弱めにしてみたり、ローションなどの潤滑油をこまめに足すなどの気遣いをしましょう。
もっとも、このようなエグい機械をつかなわなくとも、普通の電マで十分すぎるほどの刺激を与えることが出来ます。まだ電マをもっていない、使ったことがない、というのであればまずはそこからはじめてみることをオススメします。
電気を用いたプレイは、マッサージなどで使われる体に貼り付ける低周波機器をSMプレイに使ってしまうプレイです。
バラエティ番組などで、罰ゲームとしてよく使われていたりしますね。SMプレイに用いる場合は出力を最大にして行う事が多いようです。弱めの出力では、それこそマッサージ程度にしかなりませんからね。
本当にハードな海外のケースだとスタンガンや直接バッテリーなどから電流を流すこともあるようですが、こちらは絶対に真似をしないようにしましょう。専門知識が必要になってきますので、安易な気持ちでやるのは厳禁です。
その3.刺青や落書き
最近ではファッションとして取り入れる人も増えている刺青(タトゥー)ですが、SMプレイのひとつとして採用する人も多いです。
もちろん、おしゃれなマークや文字ではなく「変態」「メス豚」「ドM女」などといった被虐性や羞恥心を煽るような言葉を彫ってみたり「◯◯様専用オマンコ」といったような相手の名前を彫るケースも。
ただ、相手の名前を彫るのはかなりの決意が必要になります。
趣味として一生ハードSMプレイを楽しむにしても、一生ずっとご主人様が変わらないのはなかなか稀なケースでしょう。もし今のご主人様と別れることになり新しいご主人様が見つかったとしても、自分以外の名前が彫られたM女なんてのは不愉快なことこの上ないですからね。
刺青は一度彫ってしまうとキレイに消すことは最新の技術を持ってしても難しいといわれています。ある程度消すことは出来ますが、彫る前の状態に戻すのはまず無理です。
つまり、一生この刺青を背負って生きていく覚悟が必要になるわけです。もし下腹部に「変態」と彫った刺青をいれてしまえば温泉や銭湯に行くことはできなくなってしまいますし、ビキニタイプの水着を着ることも難しくなってしまいます。
また、刺青がある人は生命保険の審査に通りづらくなったり、そもそも加入ができなくなってしまう事も考えられます。刺青はカラダを傷つけて彫るものですから、ずっとカラダに傷が付いている状態……つまり健康体とはいえず健康面にリスクがある、といった理屈で断られることもあります。
もっとも最近の技術向上によってそういった健康面のリスクはほぼないことがわかっているのですが、日本における刺青はヤクザの証のような、反社会性の意味合いもありますからね。ヤクザを生命保険に入れるわけにはいきませんから、健康面のリスクはほぼ建前なのでしょう。
このように刺青は失うものも多く、かなりの覚悟が必要になってき
アダルトビデオなどではよく見る落書きプレイですが、これは相手のカラダを完全にモノ扱いしていますし、そういうモノ扱いされることで興奮する女性はことのほか多いのです。
SもMもカラダへのリスク無くお互いに楽しめる健全なプレイでもありますので、ハードプレイの中でも落書きプレイはリスクも少なく、特別な道具も必要ありませんのでオススメですね。
なお、落書きに油性ペンをつかうことは止めましょう。安物ですと肌がかぶれることがあったり、プレイ後になかなか落としにくいといったデメリットのほうが目立ちます。
口紅は安物でかまいませんので、100均で売っているようなモノでも大丈夫です。
まとめ
このように、ハードSMプレイというのは特別な器具や専門的な知識を求められたり、気軽に始めてみるにはあまりにも重いリスクや責任が伴うことが多いです。
あくまでもハードSMはいまのSMプレイに物足りなさを感じて、行き詰まりやマンネリ感を覚えた時に選択肢のひとつとしてパートナーと話し合うのがいいでしょう。
逆にいえば、ソフトSMで十分な快楽だったり満足を得ているのであれば、無理にハードSMに挑む必要はないのです。SMに慣れてきて中級者くらいになった頃になると「いつまでもソフトSMで満足しているようじゃみっともない」といったような気持ちが芽生えがちです。
しかし、それは大きな間違いであるといえるでしょう。
SMプレイというのは他人と比べて優越感や劣等感を得るものではないのです。これが得点を競うボウリングだったり、速さを競うマラソンだったりするのであれば、他人と比べてより高みを目指すのはいいことかもしれません。
SMプレイはあくまでもパートナーとの閉じた世界で完結している趣味なのですから、その中でより高みや優れた技術を求めるくらいにしておきましょう。
一番大事なのはパートナーがなにを求めているか、に尽きます。そのパートナーがハードSMを求めているのであればやってみるの
SMプレイは相手を理解しあって繋がり合い、二人で楽しむプレイだという基本的なことをお忘れなく!